成年後見制度
法定後見と任意後見
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。任意後見制度は、簡単に説明すれば、まだ元気なうちに将来判断能力が低下した場合に備えて、予め援助者を選んでおくという制度です。法定後見制度には、判断能力が低下した場合に、家庭裁判所によって援助者を選んでもらう制度です。任意後見制度については「任意後見契約に関する法律」(任意後見契約法といわれています)が定められています。
後見・保佐・補助
法定後見制度(「成年後見」と一般的に言われています)では、判断能力の低下の程度に応じて、後見、保佐、補助という3つの類型があります。後見は、判断能力を欠く常況にある場合をいい(民法7条)、判断能力が日によって異なっていたとしても、概ね判断能力が欠けているのであれば、これに該当します。保佐は、判断能力が著しく不十分と認められる場合をいい(民法11条)、援助してもらえれば何とかできるという状態であれば、これに該当するといえます。補助は、判断能力が不十分と認められる場合をいい(民法15条)、財産の管理は大体できるが難しいことはできないという状態であれば、これに該当するといえます。判断能力に関する判断は、主治医などと相談しながら定めます。後見等の開始審判の申立てには、主治医の診断書を添える必要があります。最終的には、鑑定を行って判断能力を裁判所が判断します。この鑑定にかかる費用は概ね5~10万円程度といわれています。ちなみに、後見等開始審判の申立ての費用については、申立てを行った人が負担するものとされていますが、本人に負担させることが多くなってきました。
後見等開始の決定がでると、成年後見人等は、その職務に応じて与えられる権限に基づいて、身上監護や財産管理などを行います。
成年後見制度
高齢になられた方が認知症や健忘症になってしまった場合や、知的障害が存する場合などでは、不動産を処分したり、預貯金を管理したりする際に問題が生じます。売買契約などを締結するのは法律行為に該当するため、それを適切に判断できる能力が求められるからです。介護保険制度が導入されましたが、様々な介護サービスを受けるためにも契約が必要とされました(「措置から契約へ」)。また、施設に入所する契約を締結する際も同様です。さらに、病気や障害につけ込んで、悪徳商法の被害に遭う危険もあります。そのようなリスクを回避し、判断能力を補う援助者を付するのが成年後見制度です。
任意後見契約
任意後見契約は、契約書を公正証書によって作成しなければなりません(任意後見契約法3条)。その内容は、自分の生活、療養監護及び財産の管理に関する事務の委託であり、その委託に係る事務について代理権を付与するものとなっています。本人の生活に密接する内容ですから、誰を選任するかは重要となります。信頼のおける人を選任するのがよいでしょう。契約の効力が発生する時期は、実際に判断能力が低下した場合に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求し、それが選任されたときとなっています(任意後見契約法4条1項)。任意後見監督人は、任意後見人の事務処理を監督する立場にあります。家庭裁判所は、任意後見監督人に対して報告を求めたりしながら、任意後見人を監督することになります。任意後見人に不正行為等があれば、解任(法8条)あるいは契約を終了させることもできます(法10条)。
財産管理
判断能力に問題が生じた場合、あるいはそれに備えるのがこれまでの制度でした。判断能力には問題がないが、高齢により、あるいは身体障害により、自身で財産の管理を行えない、あるいは不安な場合には、弁護士に財産管理に関する委任契約を締結することが考えられます。これを財産管理委託契約、財産管理契約といいます。これは契約なので、判断能力を有することが前提となっています。したがって、途中で判断能力に問題が生じた場合には、既述の法定後見制度を利用することが検討されます。契約する内容は、預貯金の管理や日常的な支払いに関する管理、不動産賃料の管理、介護に関する費用の支払いなど、お金にかかわる内容となります。また、安否確認や要介護認定・更新の手続き、生活費の授受など身の回りの事柄に関すること(身上監護といいます)をお願いすることもできます。
あくまで私的な契約となりますので、登記されることも、裁判所が関与することもなく、契約内容も自由に定めることができます。亡くなった後の事柄も依頼することができます。これを死後事務委任契約といい、葬儀や身の回りの整理、親族への連絡なども依頼することができ、人生の最後をご自身の意思に基づいて対処することができます。
契約によって第三者に財産監理業務を委託することから、そのための費用もかかります。月額3万円前後で契約することが多いようです。その他、交通費等の実費を支払う必要もあります。
また、日常的な法律相談に対応するために、個人として弁護士との間で顧問契約を締結することがあります。これをホームロイヤー契約といいます。顧問料として月額5,000円から15,000円くらいではないでしょうか。個人の相談頻度などを考えて決めていくことになります。
高齢や障害を原因としてホームロイヤー契約を検討されているのであれば、福祉に詳しい弁護士に依頼することをお勧めします。